理塘から甘牧へ
前回の高山病事件から一夜明け
俺はリタンサマーゲストハウスに移った。
そこで高山病の薬を飲むと嘘のように頭痛が消えた。
元気になると急に出歩きたくなり理塘の町へ繰り出した。
非常に単純です私、ハイ自覚しております。
町を散策しゲストハウスで恒例のライブも済ませると、もうお腹いっぱいという感じで翌朝に甘牧(ガンズ)という町を目指す事にした。
朝早かったせいでかなり眠たかったが幸運にも一番乗りだったため8人乗りバンの助手席に座る事ができた。これは快適。くっくっくっ、なんてツイているんだ!
道中かなりの悪路だったがぐっすりと眠る事が出来た。
しばらくすると
トントントン!何?ご飯休憩?いらないよ。寝てるから。
ドンドンドン(なにやら中国語でまくしたててくる)
どうやらここは中継地点で車を乗り換えろと言っている。
仕方ないから移動すると。。。
俺に用意された座席は最後尾の端で、さらに後ろの隙間には荷物がこれでもかというぐらいに積み込まれていたため、背もたれが角度で言えば約70度、強制的に前かがみならなければならなくて、さらに足元は激せまで無理やり足をねじ込まなければならなかった。
言葉が通じないため、あと何時間で目的地に着くかも分からないまま車は無情にも走り出した。5分も走ると先程にもまして悪路。高山病は治ったがまたもや全身痛。もはや拷問である。
俺はだんだん腹が立ってきた。ついさっきまではあんなにも快適で悠々とした気分で眠っていたのに、まさに天国から地獄、トランプの大富豪で言えば大富豪から大貧民に真っ逆さまである。許せない、こんな事があっていいはずがない。
アジアでは日常的にある光景だが
俺はこの時怒りに震え我を忘れていた。。
結論から言うと甘牧到着後、車の中にタブレットを置いてきてしまった事が発覚!
密かに今回の旅のテーマにしていた、どんな時でも常に冷静であれ、というスローガンをいとも容易くぶち壊してしまった。
これにはかなり凹んだ。この日の夜は悔しさのあまり一睡もできずこの旅はじめてのホームシックにもかかってしまった。
メンタルのもろさが露呈した。いや、もろいからこそ、そこを自覚してはじめから絶対に失敗しないように心がけてきたのではないか!?
トホホ、俺の Lenovo Yoga Tablet ちゃん、帰ってきておくれ。。
ここまでは完璧だったために、このワンミスが悔しくて仕方なかった。翌朝やれるだけの事はやってみようと思い、最初に乗った車の運ちゃんに連絡をつけてみたり、車を降りた場所で聞き込みしてみたりしたが、中国ではモノを失くしたりすればまず返ってこないとの事。
結局、高い授業料を払ったと無理やり自分を納得させるしかなかった。
余談であるが俺は大学には行っていないが今回のような事で授業料を払った経験が多く、普通に大学に行ったくらいは払っていると思う。
だから俺はこれを1人大学と呼んでいた。
勿論生徒は俺1人の為、主席でありビリでもあった。
多くの同年代の人たちがコミュニケーション能力を高めるために積極的に大勢の他者と接触していく中、オリジナリティを育むためにはそれとは全く逆の行動をとらなければならないと俺は本気で信じていた。
1人大学在籍中には東南アジアやインドに留学に行ったりした。
この経験が今日にもわたって自分を支える屋台骨になっている。
これは本当にいい経験だったと思う。
だから今回の件は1人大学の奨学金の返済が残っていたという事にして
無理やり一件落着にした。
話を戻そう、ここは成都から800km以上離れた甘牧である。
タブレット紛失以来モチベーションが上がらず、最近はだんだんと外を出歩くのが億劫になってきた。
近くの茶店でお茶をし、少し先の温泉に浸かり、宿の娘と会話にならない会話をしていると、あっという間に1日が過ぎてゆく。
帰国の日が確実に迫ってきた。
もうじき旅が終わろうとしている。